成年後見人の業務
家庭裁判所で選任された後見人等は、具体的にどんな業務を行うことになるのでしょうか。
ここでは、法定後見人のうち、成年後見人の業務を中心に紹介します。
就任直後の業務
審判書が届いて2週間経過したら、後見業務が始まります。
業務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません。
1
- 本人の状況の把握・調査
- 裁判所の記録の閲覧、本人と本人にかかわる親族や関係者との面会・面談、預貯金・保険・不動産・負債などの財産調査を行い、本人の抱えている問題や状況を把握します。
2
- 登記事項証明書の取得
- 支援者であることの証明書として登記事項証明書を取得します。銀行など金融機関での財産調査や行政の手続きをする際に必要となります。
- 費 用
- 登記事項証明書
(1通 収入印紙 550円)
取得方法 |
|
---|
3
- 後見届
- 銀行など金融機関、年金事務所、市区町村各課など行政機関、その他各所からの郵送物など連絡が支援者に届くよう、今後の手続きのために関連各所に届出・登録を行います。
-
- 本人宛ての郵便物を成年後見人が受け取ったときは、成年後見人が開封できます。
- 家庭裁判所の審判によって、6か月以内の期間を定めて、本人宛ての郵便物を成年後見人の元に転送(回送)してもらえます。
4
- 財産目録及び収支予定の作成
- 本人の財産調査の結果をもとに1年間の収支の予定を立てて、財産目録と収支予定表を作成します。
5
- 裁判所への報告
- 裁判所の定める期間内に、財産目録と収支予定表を提出します。
成年後見人の通常業務
適切な財産管理と身上保護に関する業務を行い、
これを裁判所の定める期間内に報告するのが通常の業務となります。
〔財産管理と身上保護の業務例〕
- 預貯金の管理(振込依頼・払戻し、口座の変更、口座の開設、解約等)
- 定期的な収入(家賃・地代・年金・障害手当金等)の受領
- 定期的な支出を要する費用(家賃・地代・公共料金・保険料・税金等)の支払い
- 証書等(登記済権利証・実印・銀行印・印鑑登録カード・個人番号カード)の保管
- 介護契約・福祉サービス契約・入退院手続き・施設入所契約、それら費用の支払い
- 介護保険、要介護認定、障害支援区分認定、健康保険等の各申請
- 行政官庁手続き(年金、登記申請・税金の申告等)の一切の代理業務
- 保険契約の締結・変更・解除、保険金の請求受領
- 不動産の売却、賃貸、住宅棟の増改築・修繕
- 相続関係手続き(相続の承認、相続放棄、遺産分割等)
これらは一例です。
後見業務はこのほか多岐にわたります。
含まれない業務
- 医療行為の同意(※ともに病状説明を聞くなどして本人の意思決定を支援する形で関与します。)
- 本人に代わって婚姻・離婚・認知・養子縁組・離縁・遺言を行うこと(身分行為)
- 居住場所を強要すること(居所の指定)
- 直接の介護や看護
- 身元保証・連帯保証 など
本人の居住用不動産の処分
本人の居住用不動産を処分(売買、取壊し、賃貸、賃貸借契約の解除、抵当権の設定等)をするには、事前に家庭裁判所に居住用不動産処分許可の申立てをして、その許可を得る必要があります。
本人の生活や財産に大きな影響を与えるため、慎重に判断する必要があります。
支援者が報酬を受けるには
後見人等はその事務の内容に応じて本人の財産の中から報酬を受けることができます。
報酬付与の申立てをすることにより、家庭裁判所がすべての事情を考慮して報酬額を決めます。
本人と後見人等とが利益相反することがあります
本人と後見人等が共同相続人である場合や専門職が複数の共同相続人の後見人等である場合の遺産分割など本人と支援者の利益が相反する場合、監督人がついている場合を除き、家庭裁判所に「特別代理人」の選任の申立てをする必要があります。
成年後見人の業務が終了するとき
本人が死亡すると後見業務は終了です。
本人の判断能力が回復して後見制度を利用する必要がなくなったときも終了します。
後見人等の死亡や辞任など支援者側の事情の場合、本人が後見制度を利用する必要がある限り、
家庭裁判所が新たな後見人等を選任します。
- 本人が死亡した場合
- 本人の死亡によって後見業務は終了し、本人の財産は相続財産として管理権限が相続人に移ります。
急迫の事情がある場合を除いて成年後見人であった者に死後の事務を行う義務はなく、原則として相続人に委ねられることとなります。ただし、成年後見人であった者は次の業務を行います。
〈本人死亡後の主な業務〉
1
- 相続人の調査
- 財産を引き渡すために、戸籍等を調査して相続人を探します。
2
- 管理の計算(財産目録、収支状況報告書の作成)
- 就任時から任務終了までの全財産の収入支出を計算し、相続人に対して、財産変動と現在の財産を業務終了時から2か月以内に報告します。
3
- 成年後見終了登記の申請
- 終了後速やかに、東京法務局に終了の登記申請をします。
4
- 財産の引渡し
- ※遺言書がある場合
▼遺言書の内容に従って引渡します。
遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者に引渡します。
※遺言書がない場合
▼相続人に引渡します。
相続人が複数の場合、原則、全員に引渡すことになります。
※相続人がいない場合
▼利害関係人として相続財産管理人の選任申立を行い、選任された相続財産管理人に引渡します。
5
- 家庭裁判所への終了報告
- 財産引渡しが完了したら最終の報告をします。これで後見業務はすべて終了します。
本人が死亡した場合、その相続人が相続財産を管理することができるまで、成年後見人は以下の保存行為ができるようになりました。 ただし、相続人が反対した場合はこの限りではありません。
- 1
- 相続財産である特定の財産の保存に必要な行為。
- 2
- 相続財産である債務(弁済期が到来しているもの)の弁済。
- 3
- 遺体の火葬や埋葬に関する契約、その他相続財産の保存に必要な行為。
ただし、 この❸だけは、家庭裁判所の許可を得なければなりません。